馬場:なるほど。サッカーに限らず勝つために選手を入れ替えていく、監督を交代させていくというのは、難しいですよね。戦術を理解するまでにも時間を要するでしょうし、1人で勝てるほどサッカーは甘くないでしょうからね。
とはいえ、勝つための補強は必要なわけですよね。増田さんは、潤沢な資金を使って外から選手を補強するのと、ユースなどから若手を育て上げるのと、どちらが理想だと思いますか?
増田:現実は、どちらもバランス良くできることが理想なんでしょうね。それに勝っていればどちらの方法でも、メディアもサポーターもさほど文句を言わないでしょうし。うまくいかなくなると、やれていない方のことをさして「生え抜きを育てないからだ」とか「もっと積極的に補強しないからだ」と言われるでしょうからね(笑)。
馬場:そうですね。勝つことはすべてのクラブにおいて最大の目標なのは間違いないでしょうけれど、資金が潤沢なクラブほど、背負っている十字架も重いでしょうから。結果を出さないと、来期の資金は確保できなくなるでしょうしね
欧州のクラブなどは、カップ戦で早期敗退することがクラブ運営に大きく影響してしまいますからね。また、スポンサーはやはり露出が多いクラブを好むでしょうし、サポーターの皆さんも強い方が応援し甲斐があるでしょうしね。逆に運営費の少ないクラブは、皆、補強に多くお金を使っている余裕がないこともサポーターの皆さんもご存知でしょうから、欧州のプロビンチアよろしく、ユースや若手を育てて起用して、いずれはビッグクラブに移籍させる、というような感じでクラブの強化をめざしていくことになるでしょうね。で、増田さん自身の「好み」で言えばどうなんでしょう?
増田:拙者は、ユース、特に地元の若手選手を育てて使ってくれる方が嬉しいです。もちろんそれで勝てたらいうことないですけどね。先ほども言いましたけど、拙者の応援する最大の理由は、「地元愛」ですから。地元選手の方が愛着がわきますからね。なんていうかな…親戚の子を応援にいくみたいな気持ちになれるというか(笑)。
馬場:なるほど。それは感情移入しますよね(笑)。では、ちょっと逆の質問になるかもしれませんが、増田さんをはじめ「サポーターに愛される選手」というのは、どのような選手でしょうかね? あ、もちろん、「地元の選手」って答えはナシ(笑)。
増田:ははは、わかってますよ。そうですね…当たり前ですけど、応援し甲斐のある選手であることが重要ですよね。で、それがどんな選手なのかってことだと思うのですけれど、そうですねぇ…曖昧な表現ですけど「サポーターとのつながりを大切にする」選手ですかね。サポーターを意識してくれているというか…。変に媚びる必要はないんですけど。
俺は、お前達と一緒に戦っている とか
いつも応援してくれてありがとう! とか
そういう気持ちを感じさせてくれる選手を、拙者は一生懸命応援したいと思いますね。たとえば、誰とも、いつとも言いませんけれど、あるとき、アウェーの試合の応援に遠征したんですよ。残念ながらその試合は負けちゃったんですが、試合後、ゴール裏で応援しているサポーターの方に選手たちがみんなで挨拶に来たりするじゃないですか。そのスタジアムは、ピッチから観客席がトラックと看板で離れていてあまり選手たちの表情も見えないんですよ。で、ある選手が他の選手に身振り手振りで「看板を越えて、スタンドの近くまで行って挨拶しようよ!」みたいに言ってくれているのが見えたんです。でも、試合に負けているせいもあってか他の選手の皆さんは、ピッチから挨拶して帰ってしまったんですが、その選手は1人だけ、看板を乗り越え観客席の近くまできて、頭をさげなんども挨拶してから帰っていってくれたんですよ。これって、少し感動しません?
馬場:いやいや、少しどころか、かなりしますよ。話をうかがいながら少し、ウルッときましたもの。」
増田:でしょ? なんていうんですかね、サポーターとの「一体感」というか、そういう「身内感」を感じさせてくれる選手、つながりを大事にしてくれる選手って、やっぱり愛されますよね。「サポーターありがとう」って、雑誌やインタビューで、言葉でいうだけなら簡単ですけど、その気持ちを行動に起こして、且つ、継続というか、当たり前のようにいつもそれを本心から実行できる選手というのが素晴らしいですね。もちろん言葉でいってくれるだけでも嬉しいですけど(笑)。
馬場:選手もサポーターを愛する、だから、サポーターも選手を愛する、という関係なんでしょうね。ちょっとクサかったかな(笑)。でも、そんなのを実感できるって、なんかステキですね。少し羨ましくなりましたよ。
増田:ただ、サポーターによる応援も、無償の愛とはいえ、まず自らが楽しんでできていることが大切だとは思いますね。そうでないと、長続きしませんしね。ですから、拙者もサポーター仲間といろいろやりたいと思いつつも、応援スタイルの「提案」はしても「押し付け」はしないようにしてます。愛するクラブを、楽しんで応援して、その中で自分の時間とお金を使ってできることは何か?を考えて、それがクラブのため、選手たちのためになっているという満足、ある意味、自己満足なんでしょうけど、それを得られればいいんじゃないでしょうかね。そして、それがクラブに、選手に、他のサポーターに迷惑や不快感を与えないでできていればいうことはないでしょうね。
馬場:なるほど、サポーター道も深いですね。「サカつく」もこれまではクラブにスポットをあてて、自分はクラブを代表して切り盛りしていく、というゲームのデザインでしたが、その中に、「サポーターズクラブ」という形やコマンドだけの関わり方ではない、なんていうんですかね「一人称のサポーター人格」というか、クラブがサポーターに求めること、サポーターがクラブに求めることのやりとりを楽しむようなものを実装できたらいいかもしれませんね。しかも、それが「楽しさ」に立脚していることが重要だということでしょうね。あ、今作の「サカつく5」には、残念ながら、そういった要素は実装されていませんが(笑)。
増田:そうですね。例えば、試合中の応援の横断幕に、自分がつくったエディット選手の名前がでるってだけでもサポーターとしては熱くなりますし、先ほど拙者が言ったような「看板越え」イベントみたいなものが挿入されるだけでも、かなりサポーターの琴線には触れるんじゃないかと思います。
馬場:なるほど。ちょっと話しこみすぎちゃいましたね。1回目はここまでで、次回は、「サカつく5」を実際に触っていただいて、その上で感想やイメージ、そして、今後に関して話をさせてください。お願いします。
増田:わかりました。楽しみだなぁ。拙者の忍術を駆使して忍び込んできた甲斐があるってもんでござるよ! なにしろ、拙者からサカつくを取ったらもう何も残らないというくらい拙者はサカつくが好きで……。
馬場:(さえぎるように)はいはい、それじゃ、また来週ですね。お願いします。