ラモス瑠偉は、日本が世界と真っ好勝負するためには、「ストライカ－が必要だ」という。日本は、釜本邦茂以来、多くのストライカ－を生んできた。だが、世界に通じるストライカ－は、釜本以降なかなか生まれていない。なぜ、日本から世界で戦えるストライカ－が誕生してこないのだろうか。
－－世界に通じるストライカ－が生まれない背景には、どんな問題があると思いますか。
「育成と環境に問題があると思うよ。チ－ムに、若い世代を厳しく教えることができる質の高い指導者がいるかどうかでしょ。それは、FWだけじゃなく、すべてのポジションに当てはまると思う。昔は、なぜチ－ムの中で成長できたかというと厳しい監督、コ－チ、先輩がいたからだよ。俺も都並には、『そんなボ－ルの取られ方はないだろ』とか『お前のせいで負けたんだ、バカヤロ－』と、何度も言った。都並は、それを聞いて『ちきしょ－』って頑張って、代表にも選ばれた。武田もそうよ。『2点取って満足するなよ。こんな弱いチ－ムならダブルハットトリックを取るぐらいじゃないとダメだ』って、怒った。そういう刺激というか厳しさがすごく大事なんだよ。俺だって、監督のジョ－ジ（与那城）から『カリオカだって、ブツブツ言いながらやっているんだからお前らもやれよ』って言われた。そんなことを言われるとズッとやり続けないといけない。やらないと監督を裏切ることになるからね。厳しい環境だけど、みんなファミリ－だった。そうして、うまくなっていったけど、今は厳しさが足りない。怒るのを遠慮しているけど、それじゃナメられるだけ。」
－－今の若い選手は、怒られるのに慣れていないかもしれません。厳しいだけでは、なかなか受け入れないかもしれません。
「プロとして世界で戦うには、甘いこと言っていたらいつまでたっても通用しない。厳しくてもファミリ－としての愛情があれば、チ－ムからいい選手は出てくる。」
－－ラモスさんは、若い世代を教えてみたいと思っていますか？
「チャンスがあればやりたい。そこで、ショ－トパスとガンガン走るラグビ－サッカ－をたたき込んでいけば、上のレベルでも走れる選手を作れる。でも、オファ－があって条件さえ合えば、どこでも行くよ。大学でも3、4年、見せてもらえるならやりたい。みんな、クセがあるんで、そのクセを修正していいところを残しつつ、悪い部分を治して、自分の新しいサッカ－をやっていくのは、そのくらいの時間はかかるからね。それは、J1やJ2のクラブでも同じ。3年やらせてもらえれば結果を出す自信はあるよ。」
今、ド－ハ世代の選手の多くは、指導者として活躍している。長谷川健太は清水で監督となり、好調を維持している。旧友である木村和司はマリノスの監督となり、その言動が話題になっている。井原正巳は柏でコ－チとなり、高木琢也は熊本の監督、相馬直樹は町田の監督となった。
－－かつての仲間が指導者になって、活躍しているのは、刺激になりますか？
「もちろん、すごい刺激になっているよ。Jリ－グだけじゃなく、風間（八宏）は筑波大学で監督をしているし、柱谷（哲二）も暁星国際学園サッカ－部でテクニカルアドバイザ－をしている。みんな、いいチ－ム、いい選手を作っているんで、きっと5、6年後には日本のサッカ－はさらに強くなると思うよ。俺も早く、現場でやりたい気持ちはある。クラブと一緒に長期的なチ－ム作りをしていきたいね。」
－－ラモスさんの夢とは？ やはり、クラブチ－ムの監督ですか？
「夢は、宝くじに当選すること（笑）。じゃなくて、夢は、日本代表の監督。日本のサッカ－のために、いつかはやりたい。それは、指導者なら、みんなそう思っているんじゃない。A代表が難しいなら五輪代表やU-20代表もある。特に五輪代表は、本当に狙っていきたいと思っている。若い選手を教えるのは楽しいし、やりがいもあるからね。それに、五輪は特別な大会だから。その時は、武田（修宏）と柱谷（哲二）を呼んで、コ－チになってもらう。武田には、FWとか前の攻撃的な選手を見てもらって、チ－ムの雰囲気作りもしてもらう。柱谷には、ディフェンスの選手を見てもらう。そして、俺がチ－ム全体を見る。その時、松木（安太郎）やカズ（三浦知良）もいてくれたら最高。そのスタッフで、代表チ－ムとして戦うのが俺の夢だね。」
ラモスは、ビ－チサッカ－日本代表監督として、2大会連続で結果を出している。前園を登用するなど、マスコミの注目を集めるプロデュ－ス能力もある。厳しさの中にも愛情を持って指導してくれるゆえ、五輪代表など若い世代の監督は適任だろう。そして、ラモスならきっとやってくれるはずだ。
