——日本に戻ってきて、欧州との違いは、どういう部分で感じる?
「欧州の場合は、一言でいうと厳しい。ボールを扱う技術、たとえばドルブルとかパスの質とかは日本の選手もそんなに変わらないし、むしろ巧いと思うこともあるけど、厳しいプレッシャーの中でのキープの仕方やディフェンスは、欧州の方がレベルが高い。中盤からガンガン当たってくるので、簡単にボールなんか持てないですからね。そういうのは、なかなか日本では経験できないけど、結局はそういう部分での積み重ねで勝負は決まって行くような気がする」
——日本が、これから世界で勝つためには、何が必要だろう。
「まず、個人としては、若いうちに世界に出ることだと思う。厳しさや強さや勝負ごとに勝ちたいと思うなら海外に出て経験した方がいい。世界の環境は、アジアとは違う厳しさがあるからね。それに、世界ではどんどん若くて優秀な選手が出てきている。俺がレンヌでポジションを奪われたのも18歳のユース上がりの選手やったし、そういう選手と同じ舞台で競争していかないと個々の力はついていかない」
——なるほど。
「あと、日本人に合ったサッカーをどう突き詰めて実現していくのか。毎回、監督が変わってサッカーが変わるというのは、もしかするとマイナスかもしれない。イギリスやスペイン、イタリアなどは、トップリーグのサッカーのスタイルがその国の代表のスタイルになっている。日本はJリーグのスタイルがそのまま代表に繋がっていくことがベストだし、代表の強化に繋がっていくのかなと思う」
——日本人に合ったサッカーとは?
「それは、分からない(笑)。今、岡田さんがやっているサッカーかもしれない。けど、言えるのは、運動量は必要だってこと。今は、ブラジルでさえ走っているからね。しかも、ハイ・プレッシャーの中でプレーが要求されている。それを打開するのは人数をかけてやるのがいいかもしれないし、そのプレッシャーに負けない力をつけることがいいのかもしれない。けど、走ることは絶対に求められていくと思うので、それを日本のスタイルのひとつにしていけばいいかなと思う」
6月には、いよいよ自身、3度目となる大きな夢の舞台に立つことになる。
「日韓の時は、脚光浴びてアッという間に終わったという感じだったし、ドイツの時は、そういう経験して行ったので、また同じような経験をしたいと思うのがあったけど、結果が出なかった。それは、本当に残念だったからね。今回は、チームとしてすごくまとまっているので、期待感はあるよ。自分も30歳という節目の大会やし、今まで積み重ねてきた経験とか、体力的にも一番出せる大会だと思う。それをチームのために生かして、チームとして結果を出したい」
——これからの自分の目標は。
「チームとしてはタイトルを目指すけど、稲本潤一としては何をやっていこうかなと。選手として、うまくなりたいというのはあるけど、なかなか定まらない。指導者とかいろいろあるけどね。ただ、今はできるだけ現役でやりたいと思っている。ゴンさんやカズさんより前には辞めれないでしょ。しがみついてでも現役やりますよ(笑)。まぁポジション的には年令を重ねてもできると思うので、サッカーがもっと楽しくなっていくかもしれないからね。そうやって、サッカーを極めていければいいかなと思う」
稲本潤一 所属 : 川崎フロンターレ ポジション : MF 1979年9月18日生、大阪府出身。 181センチ、75キロ。 フランスのレンヌから今季9年ぶりに日本に復帰を果たした。川崎のタイトル獲得の切札として期待され、アンカーとしてすでに存在感を際立たせている。日本代表でも日韓大会、ドイツ大会に次いで南アフリカ大会のメンバー入りを果たし、3大会連続で世界との戦いの場に挑むことになった。豊かな国際経験と海外で培われた迫力あるプレーで、日韓大会の時のような輝きを取り戻し、“旬なイナモト”を再現するつもりだ。 |